300字小説
君と僕の何度目かの失恋
『失恋したぁ!』
もう何度目だろう。君からのメッセージにバッグに米とお茶の葉を入れ、アパートに向かう。
案の定、君はテーブルの上にビールの空き缶をいくつも転がして、ひっくり返っていた。
「すきっ腹にアルコールはキツイよ」
キッチンに一つだけ置かれている小さな土鍋で粥を炊く。
高校生の頃から、君はクラスカーストの上位で僕は最下位。大企業に就職した君はキラキラした人を好きになっては敗れている。
「……ほっとする……」
赤い顔でゆっくりと出来た粥を啜り上げる。そんな公私共に派手に活躍している君が弱ったとき唯一頼るのが僕で。
もう、僕にしておきなよ。今夜も喉まで出かかった言葉を飲み込み、僕は温かなお茶をそっと渡した。
お題「失恋」
6/3/2023, 12:01:33 PM