腐女子

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《輝き》2/17お題

 
後藤ミサ30歳、零細企業でOLをしている。
そんな私の輝きがある日突然なくなった。


私の職場は年寄りばかりで、若い男なんていない。いてもみんな結婚してる。
毎日出会いもなく、仕事もやり甲斐のないルーチンワーク。
家と職場の往復だけの、暗い私の生活に輝きをくれた人。

それが、アイドルグループのリョウ君だった。

リョウ君との出会いは衝撃だった。
たまたま見たYouTubeで、彼だけが輝いていたのだ。
中性的な顔立ちで線も細いのに、ダンスは激しくキレキレだ、踊りながら歌をうたう彼から目が離せなかった。
こんなカッコいい人初めて見た。
YouTubeで同じ曲を何度も何度もリピートし、彼を目に焼き付けた。

そこからは早かった。
ファンクラブに入り、CDやミュージックビデオ、グッズを買い漁った。
ファンレターに思いの丈を書き綴り送った、まるで恋する乙女のように。

リョウ君にどうしても会いたくて、ライブにも1人参戦し、手作りの応援うちわも作った。
ライブ参戦用の服も買ったし、ライブ前日には美容院にも行った。
リョウ君の事を考えているだけで、毎日が薔薇色だったのに。


リョウ君が突然結婚したのだ。
こんなに一心に愛情とお金を注ぎ込んできたのに、、

「裏切り者、、、」
私はリョウ君のグッズを力任せに引きちぎった。

電撃結婚のニュースを聞いてしばらくは頭の中が怒りに支配されていたが、日が経つにつれ、心に穴が空いたような空虚感に悩まされるようになった。


毎日毎日がつまらない。
仕事から帰ってきてもやることがない。
オシャレして行くような所もない。

寝起きの感じがずっと続いているようなぼーっとして、やる気のない日々が続いた。

そんな時輝く出会いがやってきた。
落雷のようにビシャーンと私の心に彼が落ちてきたのだ。

家でやる事もなくテレビを見ていた時に、彼と出会った。
とあるアニメのキャラクター、ルーファスにハマってしまったのだ。
サラサラと流れる金髪に碧眼、童話に出てくる王子様のような外見だ
いや、カッコいい、カッコよすぎる!
私の目はハートマークだ。

二次元はやっぱりいいよね。
ずっと若いままだし、仲間のために戦う姿にキュンとなっちゃう。
イケメンで、尚且つ性格も良くて、強くて、足も長くスタイルがいい。
こんな人現実にいないよね。

私は懲りずにルーファスのグッズを収集しだした。

リョウのグッズ?メルカリに出したけど売れなかったから、生ゴミで捨てた。
もう冷めたし顔も見たくない。

ルーファスの誕生日にはケーキを置いて、アクスタを置き、ぬいぐるみを抱き、ルーファスグッズに囲まれながらルーファスの誕生日を祝った。

「ルーファス、生まれてきてくれてありがとう」
私はルーファスのぬいぐるみにそっとキスをした。

幸せに浸っていた私にある日突然訪れた悲劇。

ルーファスがアニメの中で死んだのだ。
仲間をかばって深傷を負い「ルーファスーーッ」と泣き叫ぶ仲間の腕の中で息を引きとった。

「え・・・?嘘でしょ?だってルーファス、主要キャラだし人気も高いんだよ」

「う、嘘だぁぁぁあっ」

私は泣いた、床に膝をつき、ポタポタと床に涙がこぼれ落ちていく。
深夜アニメを見ていたのに、気がつくと朝になっていた。
ずっと同じ体制で泣き続けていたので、膝も痛いし体中が痛い。


朝日が私の顔を照らす、眩しい。
そして、急に現実から目を背けてただけの自分に気がついた。


「そうだ、婚活しよう」



余談だが、ルーファスはその後、仲間が球を集め神龍もどきのものを呼び出し生き返らせた。


変わらず、ルーファスは好きだし、生き返った時は嬉しかったが、私はグッズなどは買わなくなり、身の丈にあった無理のない推し活をすることにした。

2/18/2025, 2:05:34 PM