裏表のないカメレオン

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 スキー場へ向かうツアーバスに揺られ、僕らは冬山へやってきた。高く険しい山道をぐるぐるとバスは右に左に進んでいく。
「綺麗やなあ」
 窓に鼻を押しつけながら長屋はそう感想を漏らした。つられて僕も窓一面の銀世界をみやる。
「美味そう」
「ケーキみたいやな」
 しばらく目の前にひろがる圧巻の景色に釘付けになっていた。
「晴れてよかった」
 乗車してからというもの長屋はスマホをみるや、逐一僕に雲の動きを知らせた。彼のその熱量に若干引きつつも、相槌はいつも震える。
「ほんまにな」

1/5/2024, 4:39:32 PM