私の友達はかみさまみたいだった
何でも知っていて何でも教えてくれた
「ちょっと長生きしているだけだよ」と
私と同じ目線で頬をかいていた
私はその子が大好きで
村の人達もきっと皆大好きだった
ある日その子は言っていた
「分からないことだってあるんだよ」と
何が分からないのと聞けば
「秘密なんだよ」と
困って笑っていた
ある日その子は言っていた
「今晩は決して誰も外に出てはいけないよ」
その子はいつも正しかったから
みんな暗くなる前に家に帰って
固く固く鍵をした
また明日と手を振ったら
その子は静かに頭を下げていた
そうしてその村は滅んだ
とある落胤の潜んでいたその村は
誰も彼も家の中で
家族とともに焼かれ死んだ
それを見ていた
事実を知ったあちらの家と
知って焼いたあちらの家が争い
やがて諸々巻き込んで
平和に統一された国になる
その途中経過となる景色を見ていた
私が目に掛けた者は安楽の地へ行け
やがては平和な国に幸せに生まれ変わる
知っている
全て知っている
それでも遠く濁る悲鳴に耳を塞ぎたかった
「本当に正しかったのかな」
涙は出ない
未来を導くのに不要な機能は無い
それでも泣きたかった
今すぐに村へ駆け火を消して参りたかった
「あの子たち、今だって幸せだったのに」
‹神様だけが知っている›
舗装された道を歩いていた
とても歩きやすい道だった
真っ直ぐな道に果てはなく
景色は種々の葉に覆われていた
葉には時々茨が混じり
ともすれば腕を撫で
悪戯に道を這う
けれども道は広く
前をきちりと見て歩けば
いかにも傷は浅く
痛みもすぐに忘れる
時々葉々の隙間から
鮮やかな色が見える
それは例えば甘く香る花であり
例えば燦然と輝く星であった
美しいそれらは道を逸れるよう誘い
けれども踏み出す勇気はなく
遠くなるそれをただ見送った
ある時
ある時それは目を引いた
惹きつけ焼き付け虜にした
あまりにあまりに鮮やかな
その色はあまりに美しい
揺れた身体を茨が撫で
私は初めて躊躇した
このまま道を歩いていけば
色に裂かれた心が痛む
けれども道を外れれば
茨に裂かれて体が痛む
そも色の下に辿り着けるかも
その後この道に戻れるかも
或いは色の先へ道を作れるかも
全て全て分からない
足は進む勝手に進む
自ら動かねば道に沿う
躊躇い悩み前を見横を見
悩んで悩んで悩んで
私は
‹この道の先に›
7/5/2024, 10:25:49 AM