放課後の教室に残っている幼馴染を見かけ、無言で前の席に座る。
チラッとこちらを見たが、何も言わずに課題を再開した。
椅子の背もたれに頬杖をつきながらその姿を眺めていたが、ふと右手を伸ばしヤツの左胸にそっと手を添える。
「……何してんの?」
「……」
「課題できないんだけど……」
「あんたが言ったんでしょ」
「何が」
「心は掌にあるって」
「……」
窓から差す夕陽が眩しい。
遠くから吹奏楽部の練習の音が聞こえる。
掌から小さく、だけどしっかりとした鼓動が伝わる。
心臓と、ココロが重なっている。
どのくらい時間が経っただろうか。
胸に触れていた手の上に、別の温もりが重なる。
顔を上げると茜色の空を差し色にした瞳に射抜かれる。
怖気付いてしまい手を引こうとすると重ねられた手に力がこもった。
どうか、どうか。
「そっと伝えたい」2025.02.13
2/13/2025, 1:53:01 PM