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初めて手にした呪いの残滓は、小さな黒水晶のようだった。

鋭く、冷たく、触れるだけで身を凍らすような、正体不明の恐怖が襲いかかる。
すぐにでも手放したい衝動を抑えて、水晶を握りしめる。
目を瞑り、大切なものを思い浮かべる。
家族、友人、領民、精霊、お母様…
冷えた身体に温もりが戻ってくる。
手の内の水晶にも徐々に体温が移っていく。
冷たさを感じなくなり、ゆっくりと目を開ける。
手のひらを開き、水晶を確認する。
太陽を反射し、虹色に光る透明な水晶を見て、大きく息を吐く。
どうやら呪いは浄化されたようだ。
周りで精霊たちが喜んでいるが、ぼんやりと聞き流してしまう。

これは始まりでしかない。
黒水晶を手にした時の恐怖を思い出し、小さく震える。
この先、何度となく繰り返すことになる恐怖。
肉体的苦痛はなくとも、あの恐怖に心は耐えられるだろうか。
もう一度、目を閉じる。
家族、友人、領民、精霊、お母様…
亡き母の悲しそうな笑顔を思い出す。
大切なものを守るために、目を強く瞑り、溢れそうになる涙を抑え込む。
これが私の運命だ。

5/24/2024, 2:24:19 AM