『犯人の独白』
スリル。それ自体に不快感のない不安感や恐怖感と、それに付帯する緊張のことだ。そして私はそんなスリルが好きだ。
ある日、私は山奥の別荘に人々を集めて殺人事件を起こした。集めた人の中には探偵も居る。スリルを追い求めるためとは言え人を殺すという行為への恐怖、探偵に犯人が私といつ見抜かれるのかという一種の不安。様々な感情が混じって最高のスリルを感じていた。
そして今、別荘の居間には私に招かれていた全員──私に殺された人物を除くが──が集められている。
そんな人々の前に一人立つのは探偵の彼。今から推理ショーが始まると言うわけだ。恐怖からか少し震えている人や緊張の面持ちをしている人が居る中で、私は期待から来る笑みを堪えられていただろうか。
「犯人はあなたです!」
探偵が私に向き直ってそう言う。あぁ、その顔だ。私を犯人だと断定し切っている顔。その自信満々の顔を崩す瞬間が堪らないのだ。
仮に敗れたとしてもそれはスリルを追い求めた末の破滅。そしてその破滅に身を投じるのもまた一興。つまり、これはどちらに転んでも快感を得られる最高のシチュエーションなのだ。
あぁ、探偵さん。貴方はどのように私を楽しませてくれるんです?
「おやおや、彼が殺された時間にアリバイのある私が一体どうやって彼を殺したと言うのですか?」
さぁ、運命を賭けた舌戦の始まりだ。
──お題:スリル──
11/12/2024, 2:00:35 PM