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!マークじゃ足りない感情

日記

洞窟内にあるナントカ神社を訪れた。
磯の香りが髪にまとわりついていた。黒黒した岩を踏みしめるとピチと水音が響いた。
洞窟の奥に祠が見えた。少量の光が当たっていた。

祠の少し手前で財布に手を突っ込み、令和7年製造のペカペカ10円玉を握りしめた。
上から振りかぶるようにして賽銭箱に放った。肩から変な音が鳴った。
相場は下から(放る)だろう...と連れに言われた。

順路に沿うと、出口付近にクワズイモのような植物が岩の間から生えているのが見えた。丸みを帯びた葉は金色の光を浴びていた。外の世界から差し込む太陽が彼を生かしているらしい。

太陽の金色、葉の若緑色、岩の黒灰色のみで構成された空間は私に何らかの感情を抱かせた。
感動、畏怖、郷愁、
ChatGPTに全体重を預けているヒトが持つ語彙は雀の涙どころか目脂ほども無い。
しかしなにかおおきなかんじょうを持った気がする。
!マークでは足りないような。

参拝客は少なかったが、列が詰まることがないよう先を急いだ。

植物をこえたあたり、太陽の光を一身に受け、白くぼやける岩肌がサワサワと動いた。
瞬きの間に岩肌をなぞる者について理解した。
無数のフナムシだった。

ギャ

大きな感情が洞窟内に響き渡った。




8/16/2025, 7:20:30 AM