ある日、森の中。
そう、熊さんに出会っちまいました。
森の中、と言っても自分の家の敷地内だが。
出るよ出るよ、と近くに住む伯父さん叔母さんに脅かされて20年、しかし、見たことは一度も無かった。
だから、んなもん庭に居るわけねえべ、と草刈鎌片手に家の裏手、大きな柿の木の下で雑草の駆逐に励んでいたのだが。
目の前のミョウガの草むらがガサガサと揺れて、手で触れられる距離に真っ黒い大きな頭がヒョコっと出てきた。
家で飼ってるシェパード混じりの犬と顔がよく似ていたので、小屋から出てきたのかと思って声をかけようとしたら、ピャッて顔を引っ込めて逃げていった。
ご主人様の顔見て逃げるとはとんだ駄犬だな、と少々苛つきながら雑草を屠っていたら、伯父さん家の犬が聞いたことないくらい激しく吠えだして。
その時になって、今のヤツは……と背筋がゾッと冷えた。
それからは、作業の前に爆竹を鳴らして、ラジオは音量MAX、熊鈴も付けて、ついでにナタを腰からぶら下げている。
ちなみに熊が出現した時、家の犬は納屋に逃げ込んで隅っこで尻尾丸めて縮こまってキュンキュン鳴いてたわ。まったく
テーマ「君と出逢ってから、私は……」
5/5/2023, 1:00:38 PM