形の無いもの
いざ失ってしまうと、縋れるのは思い出だけだった。
通いつめたあの場所も、何度も見返したアルバムもなくなって。日常の中でふと寂しくなった時、そっと記憶を辿ることしかできない。絶対に忘れない、忘れたくないと思っているのに時と共にそれは段々色褪せていく。きっともう、気が付かないうちに思い出せなくなっている部分だってある。
せめて形で残る何かにこの気持ちを宿せたのなら。私の中でどんなに褪せてしまっても、あの時間が確かに存在していたことの証明ができたなら。
そんな空想で、今日もこの穴を埋めるのだ。
9/25/2023, 7:17:03 AM