小絲さなこ

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「お揃いニット」



 
「ねぇ、セーターかカーディガン買う?」
「うん、カーディガンの方買うつもり」
「私も買うならカーディガンだなぁ。どの色にする?」

制服のVネックセーター、カーディガンは、ネイビー、チャコールグレー、キャメルの三色から選ぶことができる。
制服とはいえ必須アイテムというわけではないので、多くの生徒が秋になってから購買部で購入する。
そのため、友達同士で色を揃えたり、カップルで同じ色を購入することも少なくない。
 
衣替えして数週間経ち、クラスメイトの女子数名がその話題で盛り上がっている。
彼は私に問いかけた。

「自分が好きな色着たらいいと思うんだけどなー。なんで人と同じのわざわざ選ぶんだ?」

「ペアルック的な……仲良しの証拠、みたいな感じなんじゃないの」

さらりと返す。

だが、心の中は大嵐だ。
こんなことを訊くってことは、セーターかカーディガンの色を揃えよう、って提案しても確実に断られるだろう。

こうなったら、彼が購入してから買うしかない。

「じゃあ、俺たちも色とか揃えた方がいいか?」

普段言わないようなことを言い出した彼の顔を見つめる。

「な、なんだよ。俺だってたまには彼氏らしいことしようかって気分になるんだよ」

みるみるうちに彼の頬が染まるものだから、こちらもなんだか恥ずかしくなってきた。

たまには、じゃなくて、いつもならもっといいんだけど──なんて、言えない。



────セーター

11/25/2024, 7:59:29 AM