冬の朝は起きられない。
それはもう、決まりきったことで、当然僕もその例に漏れない。枕に耳を欹てて、じっと、やる気の出るのを待っている。着膨れた僕を、時間外れの鴉が、デカい口を開いて嘲笑っていた。
しばらくたって、ようやく、重い瞼を擦り、恋人(布団)と悲恋の別れを遂げる。不可避で退屈な日常のため、6時に起きて、家を抜け出し、自転車に乗り込む。冬の、この時間帯特有の空気感、街をとぼとぼと歩く人々の様子を通して見える世界を鑑みるに、朝よりもむしろ夜と言った方が正しい。
冬の朝に、まだ仄暗い空を眺めていると、到底飽きることは無い。朝の空の色は、水色や鼠色の単色ということは全くなく、世界の様々な色が混じりあって、思わず拝みたくなるような神々しさを備えている。雪の日も、雲の形ひとつとってもさまざまで、今日の神様の空は、なかなか傑作だなぁ、と思わされる。
そういえば、冬になると、毎年、どこからかふつふつと創作意欲の湧いてくるのを感じる。それは、潔く晴れやかな冬の空が、僕たちをまるで、小説の登場人物の1人として登壇に招待してくれるからかもしれない。
冬の空を取り入れ、段々と、自分の中に冬が馴染んでいく。そうして冬着を重ねて、探偵ものの主人公気分で街中を歩いていると、思わぬ謎に出会うことがある。高校生の会話、店員のハンドサイン、高架橋の下の落書き。全てに何らかに意味を無理やり紐づけて生きていくのは、存外楽しい。
「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く」
どこかで聞いた名言だが、アイデアが浮かばない日は、冬の空を探検してみるのも一興かもしれない。
11/17/2024, 11:21:03 AM