『風邪』
ピピピッ、ピピピッと体温計が鳴る音がする。
僕は気怠い体を無理やり起こして体温計を確認する。
38.2℃と表示されていた。
自分の体温を確認した瞬間、思い出したようにどっと体が重くなる。
「何度でした?」
部屋のクッションに足を組んで座っている彼が聞く。
『38.2℃……』
僕が絞り出すような声で言うと、彼は、やばいっすねw、といかにも他人事のように半笑いで答えた。
笑い事じゃない。こっちは必死だってのに。
少しむっとしながら、彼の方に背を向けてベッドに横たわる。
しかし、彼はそんな僕の様子など気にもしていないようで、なんか欲しい物ありますー?と間延びした声でたずねてくる。
『いや特にないですけど……ていうか、いつまでいるんですか?』
彼が僕の部屋に来てかれこれ二時間は経っている。
「もうちょっと居てもいいですかね?今お前の看病するって体で仕事抜けてきてるんすよね」
『……合法的にサボるために僕を使ったってわけですか』
「そうですね」
彼の性格から考えてそんなような気はしていたが、改めて聞くとつくづく最低な野郎だなと思う。
『……それ、彼女とかにやらない方がいいですよ』
「大丈夫です。友達すらいないので」
清々しい答えだ。
『そうですか』
まあたまには、こんな風に二人でいるのも悪くないかと思った。
12/17/2024, 12:51:08 AM