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「まだかなぁ、もうすぐかなぁ」
静寂に包まれた廊下で、ポツンと長椅子に座っている。けれど、そわそわと落ち着かず、立ったり座ったり、廊下をうろうろとしていた。
「かれこれ1時間は経つなぁ。けど、もっと長く待っている気がする」
分娩室に妻が入ってからそれくらいが経つが、俺には、1分1秒がとてつもなく長く感じられた。
まだかな、まだかな。とさらに待つこと数十分。分娩室から赤ちゃんの元気な泣き声が聞こえてきた。
「やった」
長椅子から立ち上がり、思わずガッツポーズをしたりとはしゃぐ俺を
「処置が終わりましたのでこちらへどうぞ」
看護師さんが分娩室から呼んでくれる。
「ありがとうございます」
促され中に入ると、横になっている妻と生まれたばかりの赤ちゃんがいた。
「お疲れさま。頑張ってくれてありがとう」
妻の頭を撫でながら労うと
「うん、元気に生まれて来てくれて良かった」
妻はホッとした表情を見せる。
「ねえ、赤ちゃん、どっちに似てるかな?」
そう聞かれ、すやすや眠る赤ちゃんをまじまじと見つめると、妻だけじゃなく、こんなに小さいのに頑張って生まれて来てくれたんだ。と、言葉にできない感動が生まれ涙が溢れる。
「どうしたの?大丈夫?」
俺が急に泣いたので、妻が慌てて俺の手を握ってくる。俺は涙を拭い
「これから俺、頑張ってくれた二人に負けないようにもっと頑張るよ。キミも、赤ちゃんも幸せにするね」
妻の手を握り返した。

4/12/2023, 8:57:14 AM