どすこい

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「君だけのメロディ」

そっと君を抱き寄せると、どくん、どくん、と微かに聞こえる心臓の音。
その規則正しい、温かな音を聞くことが好きだった。
君のメロディを聴くことは、あなたの胸へ飛びこむことのできる私だけの特権だった。
君だけのメロディで、私だけのメロディだった。
君は違う人を抱きしめていた。
“浮気”という言葉が頭を掠めた。
君は笑っていた。
頭の中がぐわんぐわんするような感覚がした。
雨が降っていた。
衝動だった。
君は驚いた顔のまま固まっていた。
君の胸に耳を押し当てても、雨の音しか耳に入らなかった。
正気に帰った。
やってしまった。
もう遅かった。

6/14/2025, 6:29:10 AM