惟新の角部屋

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なぜだろう、かれこれ1週間、子猫があとをつけてくる。ぶち柄の子猫だ。他の野良猫とは違って、眼光はまろやかで、優しささえ感じる。

最初は特段気にもとめていなかったが、否が応でも目に入るものだから興味が湧いてくる。
少し近づいてみるとあいつは少し離れ、走って行くと走って追いかける。黒くない影がまた1つ出来たようだった。

いつの間にか現れて、学校の校門で別れる、そんなあいつをいつしか「ぶち」なんて呼ぶようになった。
ぶち猫だからぶち。我ながらネーミングセンスのかけらもないと思うし、ぶちも面倒くさそうに顔を上げるばかり。ふてぶてしく風と戯れていた。

そんなあるとき、ぶちと出会って初めて、雨降りの日がやって来た。心配しながら学校へ向かう。その日は風も強く、普段の静寂が嘘のように通学路は慌てふためく草花で賑やかだった。

いつもより多く後ろを振り返る。おかしい。普段なら後ろについてきているはずの場所をいくつ過ぎてもぶちが現れない。大変そうに下っていたあの坂を過ぎても、おばあちゃんに声をかけられたたばこ屋の前を過ぎても、川を見ようと時々立ち止まっていたあの橋を過ぎても現れない。

ついに足が止まってしまった。待つより他はないと意識してしまった。すると、橋のそばのコンビニに、ぶちを見つけた。毛は濡れて固まり、ひどく震えている。風は強く吹いていた。

私は、呼びかける。
「ぶち!おいで!僕の傘に入っておいで!」
すると、ぶちはニィニィと弱々しく鳴きながら私の傘に入ってきた。足に必死に体を擦り付けていく。
制服が濡れるじゃないか、と思いつつも可愛いと思ってしまった。

じゃあ、ぶち、学校行こうか!

11/15/2023, 3:12:15 PM