望月

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《後悔》

 やらないより、やってから後悔した方がいい。
 そんな巫山戯たことを言ったのは誰だったか、今ではもう、忘れてしまった。
「気が付かなければ良かった? いや、それを指摘しなければ良かった?」
 やってしまったこと、過ぎた時間はどうすることも出来ない。
 だから、後悔するくらいなら。
「……反抗しなければ良かったんだよな、なあ」
 地面に伏したまま数十分間、一度も身動ぎすらしていない父に声を掛ける。
 返事は無い。
「でも、まあ、」
 力で支配を好む父は、それでも、父だった。
 唯一の肉親で、育ててくれた人だったのだ。
「後悔なんて……しないと思ったんだよ」
 殺してしまったからには、法的に罰は下るだろう。
 けれど、精神的には、ある種何も響かない。
 喪った。
 そう感じる心に違和感を覚える時点で、何か、どこかで道を間違えていたんだろうから。

5/16/2024, 9:07:32 AM