芝草

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『天国と地獄』

朝のランニング中に、ふと目に入ったのは万国旗だった。

私はお気に入りのポップスが流れているイヤホンを外して足を止める。

白っぽい朝の空に、カラフルで小さな旗が連なって揺れている。
私はクスリと忍び笑いをした。
なんだか大勢の子供が思い思いのクレヨンを持ち寄って、一斉に落書きをしたみたいだったから。

そんな万国旗の下には、真新しい白線の引かれたグラウンドが静かに広がっている。賑やかな空とは打って変わって、澄ましているように見えた。

でも、あと数時間もしたら、この澄まし顔したグラウンドの上を生徒たちが走り回ることだろう。

私は小さく笑いながら、また走り出す。

今日はもう、イヤホンは不要だ。
耳の奥では、小学生の頃にあの万国旗の下で聞いた曲が流れていたから。
確か、曲名はーー。

5/27/2023, 2:10:10 PM