Ryu

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優しい心に春爛漫。
彩られた世界が心に安らぎをくれる。
昨日職場で怒鳴っていた上司も、今朝は穏やかな朝の光の中で目覚めただろうか。
昨日怒鳴られていた新入りの彼女は、心をリフレッシュして朝の電車に揺られているだろうか。

この季節は短く、咲き誇る花もまもなく散り終える。
熱に浮かされるような次の季節が来る前の、ほんのわずかな春爛漫。
心ゆくまで感じ取って、その心に優しさを残したい。
夏の楽しさ、秋の寂しさ、冬の厳しさ、春の優しさ。
舞い散る桜の花びらが、通勤電車の車窓を流れてゆく。

「どこ行くの?」
「ちょっとそこまで、散歩」
「ちょっと待って、私も行く」
「へー、珍しいね」
「すごく気持ちのイイ天気だよ。家にいるのはもったいない」
「近所を回るだけだよ?」
「春だしね。何かに出会いそう」
「新入生でもないのに?」
「毎年この季節は新入生の気分だよ。世界が生まれ変わってるっていうか」
「ああ、確かに、何かが終わって何かが始まる季節かな」
「ね、だからちょっと遠出して、新しく出来たあそこの店でクレープ食べて…」
「ダイエットは一旦終わったのね」
「そう、来週からまた始めるの」

春爛漫、イイ言葉だね。
そう言って笑う君の笑顔が眩しい。
昨日職場で上司に怒られたと言っていたが、そんなことを微塵とも感じさせない。
来年の春も、僕達はこうして二人で過ごせるのだろうか。
散りゆく桜の花びらを見ながら思う。

4/10/2024, 11:18:54 PM