宵風に吹かれたい

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小学生の頃の夏休みのこと。夏祭りがあるっつて友達と一緒に行ったんだ。そしたら思ったより人が多くて見事にバラバラ。
ちょっと歩いたら鳥居っぽいとこがあったから、そこで座って待ってたんだ。んでちょっと鳥居の奥の方見てたら狐の面した女の子が現れてさ。俺と同い年くらいの子で、顔が見えないのに可愛いって思った。いわゆる一目惚れ。
声はかけられなかったんだけど、それから毎日あそこに行ったんだ。晴れでも雨でも、夏でも冬でも。
でも、あの子は夏祭りの日にしか現れない。
思い切って声を掛けた中2。あの子はニタっと笑った。

「やっと、話しかけてくれた。ねぇ、変わって?」

冷や汗が止まらなかった。今まで仮面をかぶっていると思った顔はあの子の素顔で、その奇妙な狐の顔が目を歪ませ、口を少し開けたまま弧を描く。
不気味な笑顔に変わった瞬間、俺はあいつに喰われた。

あぁ、今度は俺の番。俺の身代わりを探して今年も夏祭りに現れる。
ねぇ、変わって?そう思いながら。

これが俺の夏の恒例行事。

7/14/2025, 11:21:25 AM