かわうそ

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届かない...


五年前の今日、貴方の声を聞くことができなくなった。
最後の記憶はたくさんの管に繋がれた貴方の姿と機械音が淡々となり続ける病室。
貴方を親族が囲み、私は端でただただ見つめていた。

簡単に割り切れるようなそんな話ではなくて、かといって声を枯らすまで泣き叫ぶわけでもない。
いなくなるなんてつゆ知らず、これからも貴方といられると思っていた私にはあまりにも酷だった。

不思議と涙が出なかった。
感情が全て失われたかのように思えた。
痛みも悲しみも苦しみも、何も感じない。
ただ、貴方が居ない。

五回忌の今日、例年通りお墓に行き、貴方の好きな胡蝶蘭を置いてきた。
これも五回目か、と少し慣れてしまった自分がいた。
その時、急に涙が溢れ、今までのものが一気に流れ出た。
こんなことに慣れたくなかった。
この五年の間、貴方との思い出はこのお墓参りだけ。
もう一度貴方に会いたい。

もう一度貴方に会って、貴方のいる当たり前の生活に戻りたい。
それももう、届かない。

5/8/2025, 2:53:16 PM