最初から決まっていた。
そう自分に言い聞かせることで私の心の傷は少しだけ和らぐような心地がした。
私の手には今年の初めに買った占い本。
そしてピコンピコンと通知がやまない携帯には心配と励ましと、時々彼への批判が混じったメッセージ。
4年付き合った、私が愛を注ぎ込んだ彼との別れは
想像もしていなかったほど一瞬のことだった。
1ヶ月前から違和感はあった。
毎週のように行われる会社の飲み会。
当たり前に日が変わってから帰宅する彼。
休日が合わない私達が唯一会える平日の夜も、彼は職場の人とPCゲームの予定を入れていたっけ。
今日も仕事おそいの?ご飯一緒に食べようか。
最後にそう言ってくれたのはいつのことだったっけ。
私だって気づきたくなかった。
彼の心が他の女性に揺れていることを。
知りたくなかった。
私に嘘をついて、女性に会いに行っていたことも。
その手で他の女性に触れていたことも。
彼と女性のメールのやり取りを見つけた時、
初めて血の気が引く感覚を味わった。
見たくないはずなのに、自分でも恐ろしくなるほど冷静に食い入るようにメールを読んだ。
"裏切られた"
もうその一言だけが頭の中を駆け巡る
裏切りを問い詰めた時の彼の表情は
別れた今でも頭の中にこびりついて消えない。
ごめん。本当にごめん。
俺もこうなるなんて思ってなかったんだ。
裏切ってることも分かってた。
でもどうすればいいか分からなくて…
俯きながら辛そうな表情を浮かべてゆっくりと話す彼を
私はどんな表情で見つめていたのだろう。
私が淡々と話す姿を見て彼は何を感じていたのだろう。
別れた今となっては彼の本当の気持ちなんて分からないし、わかる必要もない。
今でも彼のことを愛おしいと感じる自分がいる。
彼のことを幸せにしたい。幸せになって欲しいと思う自分がいることを痛いほど感じている。
しかし、好きな気持ちだけではどうすることもできない事もある。
彼が自分の意思で嘘を選び、選択の繰り返しのなかで過ちを犯したのは紛れもない事実で、
それを許すと言う選択肢は今の私にはなかった。
ただそれだけだ。
私は今日も空っぽの心を抱えて生きている。
私の瞳に映る全てのものに彼との思い出という亡霊が付きまとう。
いつまでこの悲しみと絶望と喪失と…
怒りと憎しみと、嫉妬と…
8/8/2024, 3:47:06 AM