ミントチョコ

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もうすぐだから
もうすぐ行くから待ってて・・・。

私は上へと登る

登った先に何があるかなんて分からない。

でも気づいたら登ってた。

ずっとずっと塔を登っていく。ただかろうじての出っ張りに手をかけて。

登った先に何があるのか分からない。

でも約束したような・・・。

そんな気がする。

上へと手をかけて、登っていく時間。

ひたすら登っていく孤独な時間。

だけど、登りたくて。

登らないといけなくて。

・・・だって会えないから。

塔の最上部へと続く出っ張りに手をかける。

ここまで落ちなかったのは奇跡だ。

わたしは思わず下を見る。

奈落のような闇が広がっている。

目眩がまして視点がぐらつく。

塔から手を離しかけたとき、誰かが私の手を掴む。

「やっと来てくれたね」

顔を見て涙が溢れる。

「会いたかった」

私は亡くなったはずの最愛の夫に抱きつく。

「待ってたよ」

私は思い出す。老衰で亡くなった私は孫たちみんなに看取られて天に昇っていったんだ。

気づくと塔の最下層にいた。
ただ、誰かに会いたくて。

その想いだけを胸に塔を登っていた。

「会いたかった」

私はもう一度夫に言う。 
夫は優しく微笑んで頷く。

「来てほしくなかったけど、来てくれて嬉しい」

夫は亡くなった時のままの若い姿で、私も同じ位の若い姿に変わって2人で抱擁を交わす。

二人の間に光が溢れ出し、どこかもっと上へ昇っていくようだ。

どこまでいっても後悔しないよもう。
あなたと一緒ならば

2/13/2024, 1:39:49 PM