高校生の頃、僕に初めてガールフレンドが出来た。1年生の夏に僕から告白した。彼女は特別美人という訳では無かったが、愛らしい顔をしていたし、何より表情が素敵だった。百面相のように、コロコロ変わる表情は僕の話したいという気持ちを留まらさせてはくれなかった。彼女が僕のどこを気に入ってくれていたのかは今になっても分からないけど、メッセージアプリでOKの返事が来た時には何ものにも変え難い喜びがあった。まるで、それまでの晴れが気象庁によって曇りにされてしまうぐらい、比類無きものだった。付き合って2ヶ月ほど経った時に、そろそろ学校でも一緒に居ていいんじゃないかと打診してみた。そうすると、彼女はまるで初めからそうするのが当然と思っていたかのように、喜んで受け入れてくれた。
12.40に授業が終わり、12.45に同じ階で待ち合わせる。そこから、屋上に移動して13.10分まで一緒に昼飯を食べた。屋上は飛び降り防止の白い柵に囲まれていて、大きさは教室1分ほどと小さかった。僕らはいつも、影にならない場所を選んで、陽に照らされて過ごしていた。
「ねえ、なんだかこういうのって凄く恋人っぽいことじゃない?」
「そうかもしれないな。僕は君が初めてだけど、ドラマとかで見てきた恋人像はまさにこんな感じだ」
「やっぱりそうよね」と彼女は楽しそうに笑った。
いつも、僕と彼女の会話は何気無い叙情で終始していた。一見、会話が長続きしないカップルだと思われるかもしれないが、僕らはそれが心地よかったし、それが当然だと思っていた。
2/28/2025, 3:31:37 PM