灰田

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「たとえ間違いだったとしても。」

間違いだったと言うのか?と彼は言った。
間違いだったと、認めるのかと、彼は泣いた。

ああ、間違いだったんだろう。
…おまえがこんなに泣くのなら。
私はおまえの生命を、創ってしまった。いや、造ってしまった。

拒絶。拒絶。拒絶。
おまえは世界に拒絶された。わけても私に、そしておまえ自身に…。
拒絶だけの生におまえを生まれさせたのが、私。

世界中を傷つける意図を持って、私は「怪物」を生み出した。
これが「フランケンシュタイン」の名を継ぐ私の唯一の復讐であり、存在意義であり、期待された役割りであったから。

自動的に繰り返すべきことを繰り返し、人形のように…「フランケンシュタイン」博士と同じことをしたんだよ。
自分の考えなど何もなく。

脈々と続く栄華と呪いを一身に引き受けて。

そして「怪物は」やはり無力に優しく「私」の前で静かに泣く。

間違いだった…?
私は引き継がれた憎しみのなかに一片の…憐れみを見つける。かの博士の如く。

新しいことなど何もない。(はずだ)

最初からそこにその深いクレバスのような真っ黒な、愛があったというなら。

それを感じる為に私がおまえを造りだしたと言うのなら…不器用すぎる。

フランケンシュタイン博士、私の似姿。

たとえ間違いだったとしても。
彼を生かしたかった。そうなのか?…違うのか?

何でもいい。

私は「怪物」を見つめる。
私の事情は(私だけのもの)であってほしいと、ふと思う。

私は私の犠牲者を見つめる。
間違いではなかったんだよ。おまえは知らないけれど。

この世界でいちばん間違っていて真っ黒い絆を、強い鋼のようなつながりを、君を、一心に、私は求めていたのだから。






4/22/2024, 10:49:00 AM