まにこ

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嗚呼、こんな所で終わりだなんて。
最期くらい君と一緒に居たかったなぁ。
みるみるうちに赤くなる視界と、薄れゆく意識。
遠くで私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
良かった、ここまで来てくれたんだね。
ありがとう、願わくば君に幸多からんことを。

「お兄ちゃん?」
ハッと目が覚める。柔らかいベッドに並んで寝ている大の大人が二人。
「どうしました?酷く汗ばんでいる」
心配そうに額の汗を拭ってくれる君は……
忍び装束を着て、颯爽と駆け抜ける映像が脳内に映り込む。
これは所謂前世の記憶、というやつなのだろうか。
「君は……君、は」
「……もしかして」
思い出しましたか、お兄ちゃん
勢いよくガバリ、と抱きつく。
なんて事だ、既に君は私のことを分かってくれていたんだね。
「……あれ、なんで、裸」
彼の胸を借りて一頻り涙を流してから気付く、今更の違和感。お互いに生まれたままの姿で寄り添っているなんて。こんなの、まるで。
「私たち、晴れて結ばれたばかりじゃないですか」
言われて、下半身のずんとした痛みが確りと現実を知らせてくれる。
「わ、私は恩人の息子さんに……」
「おっとそれ以上はいけません」
嘆きの台詞は全て唇へと吸い込まれていく。
こんなのおかしい、間違っている。
頭では分かっているのに、先程暴かれたばかりの身体が再びじくじくと熱を帯びていく。
……前世では全てを諦めたんだから、今世では許してもらえるといいな。
君と一緒ならば、二人何処までも堕ちていこう。
覆い被さる可愛い弟の背中にそっと手を回した。

4/4/2025, 8:35:30 AM