ニャア、と黒猫が鳴いた。
少女の足にじゃれつく子猫は、前足で飛んできた蝶を追いかけている。
少女は気にもたれかかり、本をひざの上に置いて船を漕いでいた。
時折カクン、と首が揺れる。
子猫が少女のひざの上に乗った。
蝶を追いかけた前足が止まり、動きが止まる。
子猫が見上げた先に、木の葉の間から太陽の光が漏れていた。
陽光が目に入ったのか、ナァン、と子猫が鳴いた。
「どうしたの?」
その声に起こされたように、少女が目を覚ました。
「何か面白いものでも見つけた?」
少女は前足を上げたままの子猫の頭を撫でた。
そしてひとつあくびをすると、ひざの上の本を手に取った。
「先生の宿題を済ませなくちゃね」
そして子猫を抱きかかえると、ぽつりと呟いた。
木漏れ日に照らされた読みかけのページを開いて。
/11/16『木漏れ日の跡』
11/15/2025, 5:42:26 PM