NoName

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夕方、いつも通り息子の亮を迎えに保育園に行く
ひょこと教室を覗くと亮と目が合った

「ママ!!」

教室から走って出てきた亮はニコニコと笑顔だ

「おかえり、亮」

「ただいま!
あのね、ママ」

モジモジと恥ずかしそうにする亮
亮の目線の高さに合わせてしゃがむ
そして「大丈夫だよ」って気持ちを込めて頭を撫でる

「これ、あげる!」

私の気持ちが通じたのか亮は後ろ手に隠していた手紙を差し出した

「ありがとう」とお礼を伝えて手紙を貰うと亮は嬉しそうに帰り支度をしに教室に戻って行った
そっと手紙を広げるとそこには「いつもありがとう」と書かれていた

「っ!」

泣きそうになっていると一連の流れを見ていた先生が教室から出てきた

「亮くんは優しい子ですね」

そう言いながらティッシュを渡してくれる

「そうですね…」

その一言を返すのが精一杯だった

なんの記念日でもない日にようやく平仮名が書けるようになった息子から貰った初めての手紙
それが私にとっていつまでも捨てられないもの

8/18/2024, 1:47:57 AM