Mey

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「愛を注いでいたら、いつか報われるのかなぁ?」

グラウンドでサッカーボールを追いかける彼。
それをグラウンドを取り囲むフェンス越しに眺めた。
同じクラスの彼にそれとなくアピールしているんだけど、今のところ手応えは全くない。
恋心を気づかれてすらいないと思う。


「私、愛と努力って似てると思うんだよね」
「へ?どういうこと?」

私の隣で同じくサッカー部を眺めている親友。
彼女の言葉を咀嚼できなくて聞き返す。
彼女はサッカー部のGKに恋している。
ちなみに私の好きな人はFWだ。

「キーパーの彼が言ってたの。
キーパーはこれ以上練習できないくらい練習しても、必ずしも試合で無得点に抑えられるわけじゃない。シュートを止めるために右側に飛んだけど左側に打たれたりとか。シュートの前に止める方向を予測するから、どうしようもないこともあるんだって」
「努力は報われないってこと?」

シュート練習と、それを止める練習をしている彼に視線を移す。
随分と寂しいことを言う。
でも彼がそんなことを言っていたとは信じられないほど、懸命に練習を続けている。

「努力しても試合で必ずしも結果として結びつかないこともある。けれど、長い目で見れば努力したことは自分の身になってるんだって。小学生の頃からキーパーやってる自分が言うから間違いないって言ってた」
「ふぅん。自分のどんな身になったのか聞いてみたいなぁ」


愛と努力は似ている、か。

努力しても、試合で結果が得られるとは限らない。
愛を注いでも、片想いが実るとは限らない。

努力したら、長い目で見れば自分の身になる。
愛を注いでいたら、長い目で見れば自分の身になる…?

親友が呟いた。
「愛を注ぐ経験値が、愛し方のレベルを上げるんじゃないかなあ」
「なるほど」
「付き合ってる人たちを羨ましいなって思ってたけど、まだ皆んな、レベル上げの途中なんだよ」
「うん。きっとそうだね。もしかしたら死ぬまでレベル上げするのかも。人は人と無関係ではいられないから」
「深いね」
「深いわ」


「あっ!」「あっ!」
2人同時に叫ぶ。

試合形式の練習が開始されて早々、FWの彼がシュートを放ち、GKがそれを止めた。
「キーパーめっちゃファインプレーだった」
「シュートもめっちゃ綺麗だったよ」

真剣な表情でボールを追いかける彼は、あっという間に私たちから遠ざかってしまった。

私がずっと見ていることなんて気づいてても気づかなくても。
結局私は彼のことが好きなんだなぁと思う。
真剣な横顔にときめいてドキドキしているから。


愛を注いで、私の想いは報われる?
わからない。
でも、人生におけるレベル上げの途中だと思えば、
愛を注ぐことに躊躇いなんていらないのだ。

「FWがんばー!」
親友が笑って、私と同じく声を張り上げる。
「GKがんばー!」

応援の声に気づき、サムズアップしたものの、照れてるのが可愛い。

私たちは調子に乗って、もっと応援してみる。
彼はもうヤメロと両手でバツを作って、照れながらボールを追いかけて行った。




愛を注いで

12/13/2024, 9:46:10 PM