意味がないこと
ある日、娘が言った。
「こんなに普通の毎日がつまらない…」
「留学したい」
スポンサーは祖父母、彼女は留学し上機嫌の鼻高々でライトアップされたエッフェル塔の動画を送ってきたダイヤモンドフラッシュとか言うらしい、今世界は自分のためにあり昇ることばかり語っている彼女に届くはずもない意味がない言葉をかけてみた
「人は昇っている時ほど足元を見なきゃだめなんだよ」
「お母さんは心配性だな、上見なきゃ昇れないじゃない、昇る時は一気に昇らなきゃ」
・・・ 全く分かっていない、分かっていなかったね、スポンサーいなきゃ昇れなかったその場所は、お前の力なのかい?そこ気づかないといつか大怪我しなきゃ良いがと、心配性の母は届かない意味のない心配を心の中に何時も持ち、日めくりカレンダーを毎夜捲っては手を合わせていた。
「今日も1日何事もなくありがとう御座いました」
そんな母の心配は届くはずも無く、意味のない祈りだと知りつつも、それでも手を合わす母の意味ない祈りであった。
そんな折、彼女の1番のスポンサー自慢の孫娘可愛いの爺婆が相次いで亡くなった、慌て帰郷した彼女は、与えられることが当たり前であった二人の大スポンサーの喪失に気づかずただ幼子が愛する祖父母を喪った悲しみに素直にくれていた、この素直さ計算高さのないところが唯一我が娘の徳であろうと母は思いながらも、娘の将来を考えていた。
そんな、年の瀬久し振りに娘が帰郷し舅彼女にとっては祖父、姑彼女にとっては祖母が居なくなった実家の整理も終わり、仏間で本当に久し振りに二人きりになった。
「あぁ、嫌だっ毎日がつまらない、私は何者かに、きっとなる!特別な何かを…」そう言ってジタバタして、大騒ぎしてみんなに背中を押されて留学して、何年になるかしらね・・二人向かい合わせて、両親祖父母の入った先祖代々の仏壇の前で向かい合わせた。
「あんた、もう大スポンサーのおじいちゃんもおばあちゃんも居ないんだから、少しは地に足つけなさいよ」
「ほらきた、お母さんは相変わらず貧乏性ね、今でもまだ、日めくりカレンダーに手あわせて意味のないことしてるの?私はお母さんみたいに嫁ぎ先の稼業をタダ働きみたいに尽くして働いて、つまらない主婦になんてならない、私にしか出来ないことをする」
「よく言うわよ、あんたに私にしか出来ないことをしてもらう為にどれだけの人があんたの背中押したのか忘れちゃあかんよ!人が生きるってことは幸せってことは、平凡な毎日が大事なんだよ」
「だから、お母さん毎日、日めくりカレンダーに手を合わすの?」
「そうだよ、今日1日ありがとう御座いましたってね、あんたの曾おばあちゃん、お母さんのお祖母ちゃんに習ってね」
「へぇ~、今時日めくりカレンダーって、、そうだ、お母さん私結婚するから」
えっ!?今なんと?今の今、私は私にしか出来ないことをするとか言ったばかりでは?それに本当にあのアクセサリーみたいな浮世離れした六麓荘町のボンボンと結婚するつもりなのか?と、口をパクパクさせながら母は尋ねた。
「正気かあんた?」
「そうよ、私は私にしか出来ないことをするために彼と結婚するの、彼、私のために学校創ってくれるって」
「、、スポンサー変更かよ!」
「あんた、上に嫁ぐと苦労するよ」
「大丈夫よ、お母さん、私には出来るから心配しないで、お母さんやお父さんおじいちゃんや、おばあちゃんが掛けてくれた想いやお金に応えるために、私は上に行く、そのための結婚よ、高く売れる私にしてくれてありがとう」
娘は、仏壇と日めくりカレンダーに手を合わせ振り返って笑った。
わかっとんのかーい!
彼女への心配は意味のないことの様だった。
全て実話からヒントを得た、お話です。
寂しいやっかみ等、受け付けておりませんので悪しからず(笑)
令和6年11月8日
心幸
11/8/2024, 11:34:28 AM