今日のテーマは、逆光ですか。
昨日の文学繋がりで「斜陽」とかでもなく
逆光…。
逆光ねぇ。
うーん。逆光。逆光…。
おや、「見せ場」と書かれたカードが現れた。
確かに逆光は、「お前は誰だ」みたいなシーンで使われたり、「現れたのは、敵か、味方か」みたいなシーンでも逆光が多い。
隠していたことを表に出すシーンも逆光が多い、か。
体の一部が影で隠れることによって、不吉や意味深、疑惑等など、心をザワザワさせる効果が逆光にはあるのかもしれない。
さてさて、それを踏まえて物語を書くならば何が良いだろうか。
久しぶりにカードも現れたし、彼らを覗いてみるとしますか。
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海の底を二つの影が歩いている。
海の底は暗黒だと思っていたがどうやら、違ったようだ。
海底を歩く影の一つ──思考の海の番人は、自身の思い描いていた海と違うその景色を眺めながら、つらつらと思った。
光も届かず、海の藻屑となった言葉の残骸で黒く埋め尽くされているとばかり思っていたが、これはどういう事だろうか。
海の底だというのに、周囲はマリンブルー色をしている。そのうえ、明るい。
海面の方が暗いだなんて、意味がわからない。
思考の海の番人が、落ち着きなく周囲をキョロキョロと見渡していると、隣から笑い声が聞こえた。
「貴方もよく知っている場所なのに、どうしたんです?」
「ここは俺の知る海の底じゃない。俺が知るものより、綺麗になっている」
本体の残留思念も、文字の残渣もない海底は、一面白い砂に覆われている。
軽く蹴っても、白い砂が舞い上がるばかりでヘドロが出てくる様子もない。
自分の記憶にある海の底は、こんなに白く輝いていただろうか。記憶にない。
「お前が綺麗にしたのか?」
俺の言葉にドリームメーカーは首を横に振ると、クスクスと笑った。
どうやら、ドリームメーカーの仕事によるものではないらしい。
ドリームメーカーの海漁りの結果ではないとしたら、一体誰がこの海を綺麗にしたのだろうか。
腕を組み唸っていると、ドリームメーカーが話しかけてきた。
「問題です。掃除をしなさいと強制されるのと、自らの意思で掃除をするのとでは、一体どちらが綺麗になるでしょうか?」
何だこの問題は。
そして、何を言いだすのだろうか、コイツは。
「あっ、何を言ってるんだコイツみたいな顔をしましたね。真面目な話のつもりなんですけど」
ドリームメーカーが頬を膨らませてプンプンと怒りはじめた。面倒くさい。
ため息を付き、ボソリと答える。
「自分の意思でやったほうが綺麗になる」
俺の答えを聞いて、ドリームメーカーは、ニッコリと笑った。相変わらず変な奴だ。
「そう、その通り。意思を持って行った方が強制されるより丁寧にこなすものです」
「その問題がこの海の底の様子とどう繋がるんだ」
「ほら、懐かしい扉が見えてきましたよ」
人の話を聞いているのかいないのか、或いはワザとなのか。ドリームメーカーは、前を見ろとばかりに前方を指差した。
何の変哲もないドアの扉だけが海の中にポツリと立っている。
特徴といえば、真鍮のノブを持つのみで、特別なデザインなんてものは無い。何処にでもある至って普通の木の扉だ。
真鍮のノブを回せば、懐かしいあの空間へと繋がっている。俺がずっと避けてきたあの場所へ。
思考の海の番人は、扉の前で立ち止まると静かな目で扉を眺めた。
「さあ、このノブを回して中へ」
ドリームメーカーが耳元で囁く。
ノブをつかもうとのばす手が震える。
これは、怒りなのだろうか、或いは怖じ気づいているからだろうか。
気に入らない。
今更、何を恐れ、何を怒ると言うのか。グラグラと揺れる心を押さえ付け、しっかり指先まで力を込める。
震えることは許さない。許してなるものか。
半ば意地になって、ノブを回した。
ギギギと鈍い音を立て、扉が開くと中から光が溢れた。
眩しさに顔を顰めると、逆光の中に三人の人影があった。
1/24/2024, 1:03:17 PM