かっぱえびせん

Open App

ゆずの香り

駅のホームでふと香ったゆずの香り。
その香りに導かれるように歩くと、目の前に現れたのは、
昔通っていたカフェのオーナー、リョウさんだった。

「おお、久しぶり!」
リョウさんは笑いながら、手にゆずを持っていた。
「これ、君にちょうどいいと思って。」
「え、なんで急にゆず?」
私は驚きながら聞いた。

リョウさんは少し照れくさそうに言った。
「君が好きだったジャム、覚えてる?それを作ったんだ。」
「あのジャム…」
私は懐かしさに微笑んだ。

「君にもぜひ試してほしいな。」
リョウさんはジャムを手渡してきた。
「ありがとう。」
私はそれを受け取ると、ふと心が温かくなるのを感じた。

その香りが、あの頃の静かな記憶を呼び起こし、
私は少しだけ胸が締め付けられるような気持ちになった。
でも、それでも歩き続ける。
あの頃の私が、今もどこかに残っている気がしたから。

12/22/2024, 12:22:12 PM