途中で帰りたくなった僕はこの電車を降りようとした。
でもそれをアイツを許してはくれなかった。
この電車は地獄行き。
僕には何をした記憶も残っていないから
ここに行く理由が分からない。
「まだ旅の途中でしょう」
不気味に話すアイツは僕の腕を強く握った。
アイツの手跡がクッキリついた。
「覚えてないで済む話じゃないでしょう」
なんて僕を見る。
僕はぐるぐると思考を働かした。
でもやっぱり僕は
こうなっている理由が見つからなかった。
「まぁまだ旅の途中ですから
ゆっくり思い出しましょう」
ねっとりとその言葉が僕に絡みつく気がした。
僕の背中に冷たい汗が伝った。
早く終わってくれなんて思いながら
僕は座席に座らされた。
─────『旅の途中』
1/31/2025, 10:26:05 PM