maria

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「1年前」

高校前にあるバス停


まだ君を知らない頃
この場所はなんてことのない
ありふれた場所だった。
中学校からの帰り道
大勢の高校生がふざけあって
小さなバス停にたむろして
一時間に二本「しかない」バスを待つ。

中学生の僕は
大きな声の男子高校生が苦手で
傍を通る時はドキドキして怖くて
いつだって 下を向いて
足早に通り過ぎた場所だった。



いま僕はその高校生になり
君が乗るための
一時間に二本「も」あるバスを
君と話しながら待つ。

まだ君の声を聞いていたい
まだ君の表情を見ていたいのに
もうバスが来てしまう。
君が行ってしまう。


一年前と風景は変わらないのに

こんなにこの場所を特別に思えるなら

こんなにこの場所をいとしく思えるなら

君が笑っていれば きっと

君がそばにいれば きっと 

僕はもう 下を向いて

足早に通り過ぎる場所なんて

この世のどこにだって

       なくなるに違いない

一年前、

  そしていま、

     そして……未来



            「1年前」




6/16/2023, 10:56:01 AM