「こんな夢を見た」から始まる小説

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こんな夢を見た。私が先生として授業をしていると、生徒たちの目線が気になった。目線を追うと教室の天井近くに、女生徒がふわふわと浮かびながら居眠りをしていた。生徒たちが、目で私に訴えかけているのが分かった。本当に彼女は困った生徒だ。息を吸い、大きな声で彼女の名前を呼ぶ。すると彼女はビクリと肩を震わせ、そのまま落ちてきた。痛そうに腰をさする彼女の前に立ちはだかると、彼女は見上げ苦笑しながら頬をかいた。
「浮きながら、居眠りしてるんじゃないよ」
「えへへ…ごめんね、先生?」
私は彼女の手を取り、席に座らせると授業を再開した。彼女は、クラスで浮いている存在だ。人間関係的にも、物理的にも。二者面談で馴染めないから、浮いているのかと尋ねたことがある。
「違うよ、先生。わたし、生まれた時から浮いているんだよ」
生まれた時から浮いている?
「気が抜けると、ふわふわしてあんな風に浮いちゃうの」
気が抜けると浮く?ヘリウムガスを入れた風船みたいだ。
「じゃあもし外で気を抜いたら、風船みたいにどこまでも飛んでいくの?」
「うん。外でうっかりお昼寝したら、帰ってこれないかも」
信じられないが、彼女が浮いてるのを何度か見ているため否定できない。彼女は、理解に苦しむ私を不思議そうに見つめる。
「先生だって、子どもの頃は空中浮遊して遊んだでしょ?何で、難しい顔してるの」
子どもの頃、空を飛びたいと思ったことはあっても、空中浮遊をした覚えはない。その時の二者面談は私が彼女の話に頭を抱えたまま終わり、進路の話は出来なかった。今度の進路相談こそはと思っていたが、それは叶わなかった。ある日昼休みが終わっても、彼女が教室に戻ってこなかったからだ。嫌な予感がして、教室の窓から空を見上げた。案の定、彼女がふわふわと空へ上昇していくのが見えた。大きな声で彼女を呼ぶと、彼女は私に気づいて笑顔で手を振る。降りてきて、と声をかけても降りてくる気配はなく、そのまま風に乗って青空に消えていった。

4/30/2026, 8:16:04 AM