当時、俺には、好きな人がいた。
みんなの憧れで、たくさんの命を救ってきた人。
俺とあの人は、15歳差。
その人と俺は、夜に親に内緒で二人で会っていた。
実は、好意を寄せていた相手。
…寄せていた、というのはおかしいか。
寄せている、だ。
しかし、あの人に会うことはもうない。
あの人は、もうここにはいない。
会えない。触れられない。話せない。
そんな彼女との日々は、誰にも明かす気はない。
俺とあの人との、大切な時間。
二人だけの、大切な秘密。
夜、星空の下で、あの人───結奈さんと出会って、話をした。
小学校で習った星座を探したり、学校であったことを話したり。
そんななんてことない雑談が、当時の俺には一番楽しいことだった。
一番、心落ち着く時間だった。
ふと、結奈さんが好きだったスズランを見て思い出した。
5/3/2024, 1:06:16 PM