towa_noburu

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「…子供の頃の忘れられない夢の話をしよう。」
私は混雑する遊園地にいた。腕には愛らしいクマのぬいぐるみ。私はそのぬいぐるみを何故か死んだ母親の魂が宿った媒体だと認識していた。そして、そのぬいぐるみは喋る設定だ。
他に保護者がいない小さな女の子が遊園地入場の列に並んでいる。しかし入場受付係は、「大人一枚、子供一枚」と野太い声で喋るクマのぬいぐるみにも動じずに淡々と「かしこまりました〜!」とチケットの発行処理をした。私は母に問いかける。「お母さんとまた遊園地行くのが夢だった」クマのぬいぐるみ…もとい母は答える。「寂しい思いをさせてごめんね。今日は思いっきり楽しもうね」心なしか腕の中で母が私に微笑んだような気がした。
さて、私と母は久しぶりの遊園地を楽しむかと思いきや…そこに空から円盤の大軍が。遊園地を大占拠である。夢特有のやや突拍子もない場面転換だなとご容赦いただきたい。
宇宙人たちは入り口の片隅に人々を集めてこう宣言した。「ここは今日から我々の私有地とする。我々はずっと人間の作ったおもちゃで遊びたかった。我慢できなくて、何万光年旅してやってきた。思い出たくさん作る。」テレパシーで人々の頭の中に直接語りかけてきた宇宙人たち。母はそのテレパシーに何故か納得し…「なら仕方ない。」と呟いた。私は何万光年も旅してきたのだから宇宙人たちが遊園地を楽しんでもいいのかなと思ったが、「独り占めはよくないよ。幼稚園で遊具はみんなのものって教わったもの。」と小声で言った。その言葉を聞いていた周りの人たちは私の意見に同調して頷いた。
さらにその言葉を聞いていた宇宙人たちは「我々より下等生物な地球人類に…我々が諭されている?我々劣っていない。心外だ。けど、その意見も理解できる。」
宇宙人たちはフードコートの椅子に座り作戦会議をし始めた。
その隙に私と母は宇宙人たちの一瞬の隙をついて、入り口に向かう。そして、何故か拘束を免れていた受付係の人に、お願いをした。「あの宇宙人達なんとかして。」すると、受付係の人は「かしこまりました。」と言って、手元にある赤いボタンを押す。
すると宇宙人達が座っていた椅子が爆発した。
宇宙人達は空に吹き飛ばされ、星になった。
私と母はその光景を見届けながら呟いた。
「さぁ、まず何から乗ろうか。」
「お化け屋敷!」
そしてお化け屋敷に入る手前で実に惜しいことに目が覚めた。私は遊園地で1番お化け屋敷が好きなのだ。
怖さと涼しさは最高のスリルを味わえる。
「って言う夢を子供の頃に見たの、今思い出した。」
「まず、母さんを殺さないでよ、さゆみ。母さんバリバリ健康で生きてるんだから。」
「知らないよ。夢だもの。」
「まぁ、そうね…さて」
私と母は空を見上げた。

雲一つない晴天。
街の上空に飛来する大きな大きな円盤型未確認飛行物体。
「我々は…「「ああ、もうそういうのいいから!!」」
私と母は宇宙人の発するテレパシーを遮り、大声で叫んだ。
さて、これからどうしょうか。
私と母は顔を見合わせて、ニヤリと笑った。

6/23/2025, 10:54:21 AM