VRの世界は最高だ!
俺がどんなに化粧してもなれなかったかわいい女の子にだってなれるし、ボイスチェンジャーを使えばキラキラした声が出せた。
そんな俺を見て男共は俺をチヤホヤしてくれる。
昔からかわいい女の子のアイドルになりたくても、自身の醜い姿で諦めていた夢が、VRの世界であれば叶えることができたのだ!
そして、VRの世界であれば、どんなところにだって行ける。
例えば宇宙、例えばお化け屋敷、例えば終わらない遊園地。
夢にまで見た景色を、俺は空を飛んで眺め、時には遊び、学び……自由なひとときを過ごすのだ。
あぁ、そろそろ眠らなければ。そう考えた俺は、空を飛びながらひとつの建物へと向かう。
そこはコンクリートでできた無機質な建物で、未だ稼働中のアンドロイドがこちらに見向きもせずに警備を続けている。
俺は、慣れた様子で道を歩んでいく。嫌だ、眠りたくない。もっとVRの世界に浸っていたいと考えるも、歩みは止まらない。仕方ないことだ、と内心諦めつつあったのは、成長の証なのだろうか。
俺はある一室に入っていく。そこには、億を超えそうな程たくさんの水槽があった。
その中の1つ。自らの脳が浮かぶ水槽の前で、俺はため息を吐いた。
どうして、こんなにもVRが発展したというのに、現実という夢を見なければいけないのだろう。
外で警備するアンドロイドのように、眠らなければいいのに。
俺は憂鬱な感情に支配されながらも、繋げられたチューブから発した電波のせいで、速やかに意識を失う。そうして、現実という夢の世界へと落ちていくのだった。
(お題 現実逃避)
2/27/2026, 12:16:20 PM