水の中を、1秒でも一瞬でも、速く、速く――――。
練習で染み込ませた動作が、鍛えた筋肉で再現される。ひとかきひとかき水を掻き分けて進んでいく。
隣のコースにはライバルの影。負けるもんかと心が震える。
最後のターン。泣いても笑ってもあと50mで決着する。勝てる、勝てる、俺は勝てる。自分を奮い立たせながら、全てを出し切るつもりで、夢中で泳いだ。
壁に手が届く。水面から顔を上げる。途端、喧騒に包まれた。俺はそれには構わずに、記録が表示されている電光掲示板を仰ぎ見た。
一番上に、俺の名前。県大会優勝だ。それも自己ベストも更新してる。俺は水しぶきを上げて大きくガッツポーズをした。
応援席にいる同じ学校の仲間達を見れば、こちらへ向かって腕を振り回して喜んでくれていた。俺は、そちらへ向かって高くピースを掲げた。
俺の夢は、全国優勝して、もっともっと速くなって、オリンピックに出て、メダルを取ること。今日はその為の大きな一歩だった。
夢へ!まだ長い道のりの途中に、俺はいるのだ。
4/11/2025, 9:19:26 AM