鈍い金色の、円柱形をした三本のおもり
それが下に落ちきらないうちに
鎖を引いて持ち上げる
日に一度
それをするのが幼い日の私の役割だった
大きな柱時計は おもりが歯車を回し
金の皿のような振子が揺れて
カッチコッチと時を刻んでいく
文字盤にはローマ数字
針は装飾的な曲線が組み合わされて
おもりを引き上げるために前扉を開けると
木と塗料と金属のにおい
文字盤の上には月と太陽が交互に現れ
昼と夜とを知らせる仕組み
太陽が隠れるところをいつも見ていた
ぼーん、ぼーんと深く響く音
私が鎖を引いて動かす時計
カッチコッチ
隠れていく太陽をみながら
私が月を太陽を 時を動かしていた
「時計の針」
#324
2/6/2024, 10:47:44 AM