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『私だけ』

暑い。
葉書を投函して汗を拭う。
ちょっと首を傾けて投函口を覗くと、もういっぱいになっているのが見える。

そろそろ、このポストも溢れるかぁ。
次のポストは小学校の向こう側だ。
「かもめ~る」懐かしい響き。
暑中見舞いの葉書、夏らしいデザインのものが毎年出ていて、良い風物詩だったんだけどなぁ。

この国のみならず、世界中が高温期に入ってどれくらい経っただろう。
もう数えるのもやめてしまった。
あまりの暑さにいろんなものが溶けた。

樹脂で出来たもの
石油から精製したもの
それから――生き物

こんなことになる前は、「暑い〜溶ける〜」なんて軽口で言ってたな。
まさか本当に溶けるとは思ってもみなかった。
目の当たりにした時は、びっくりした。

しかし、さすがに鉄製の郵便ポストは溶けてない。
強い。頑丈。
今のところ。

さて、明日は小学校の向こう側に足を伸ばさなくては。
暑中見舞いは風物詩ですから。
使命感に燃えるよね。

だって、溶けてないのは――私だけ。

7/19/2024, 7:09:45 AM