無音

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【136,お題:何でもないフリ】

私のクラスにはいじめがあった。

最初は転校生の子、髪をツインテールにした綿菓子みたいにふわふわの女の子

その子は仲良くしようと頑張ってたけど、1ヶ月経った辺りから学校に来なくなって
そのしばらく後に、転校したって知らせが入った。


次のターゲットは、クラスで一番頭の良かった男の子
テストがいつも満点で、ちょっと話が長いけどクールで優しい子

その子は日に日に痣が増えてきて、先生に相談したみたいだけど全然いじめは止まなくて
数か月後、やっぱり学校に来なくなった。


止めろって思われるかもしれない、見て見ぬふりはダメだって
でも私は正義のヒーローじゃない、皆が皆人を助けられる器じゃない

私の船は1人乗りで、あと1人乗せたら沈むかもしれない
そんなリスクを抱えてまで誰かを救えるほど、私は出来た人間じゃないの


でもきっと、私はどこかで安心してたんだ
そういうものだって何でもないフリして、いつしかそれが当たり前になって

だからこれは、私への罰だ


「......えっ.........」

机に置かれたのは百合の花の花瓶
真っ白い紙に『ご愁傷様です。』と書かれたメッセージカードが添えてある

「なに...これ?......ねえ、みんな...?」

何で?昨日まで別の子だったでしょう?どうして急に...

クスクス嗤う子、気まずそうに目をそらす子
......前の私みたいに、塀の向こうの出来事だと、ただに日常の1部としか見てない子

そっか...こんな気分だったんだ...

見ないフリしてた手前、助けてなんて言えない
誰も助けてくれない、誰も止めてくれない、永遠にも思える絶望感

これが私への罰か

静かに鞄を開け、これがこれからの日常なんだと
何でもないフリをしながら呟いた。

12/11/2023, 10:09:30 AM