カツカツ、と小気味いい音を鳴らしながら人二人分通れるかどうかすら怪しい広さの廊下を渡る。今は一人だから広いほうだろうという意見は当然ご法度である。
灯りと言えば左右に点々と存在するキャンドルのみで、光量が足りているとは言い難い。というか正直暗い、前見えない、早急に帰り馳せ参じ仕りたい。
とはいえ、こんな事で宝の山をみすみす逃すというのも私の教義に反する。苦節数ヶ月、やっとこさ見つけた隠しルートなのだ。この道の先が私の命運を分けると言っても差し支えない。
それからしばらくして、行き止まりを告げる扉に辿り着いた。8つのキャンドルが円形に装飾されたそれは、予想通り押しても引いてもピクリとも動かない。当たりだ、そう確信した私はつい最近教わった呪文を唱えた。
次の瞬間ガチャリ、と鍵の開く音と共に一筋の光明が差し込んだ。
「キャンドル」
11/20/2023, 8:41:34 AM