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#2『束の間の休息』
 
 ほんの2ヶ月前の話だ。

 夏休み。朝イチの部活。皆より早く来てホールを開ける。暗く広いその空間に客電をつける。ついでに空調も。照明器具の確認をしたら、観客席で1人、脚本の手直しをする。演出も曲選びも私。本トよくやってるよ。50分の劇作るの初めてなんだけどな。

 5分前に1人、時間ぴったりに1人、少し遅れてもう1人、後輩が来る。確かに少ないけれど、これで役者はそろった。唯一の同期で裏方で部長のあの子はそのうち来るだろう。本番まで2週間。3時間後にはダンス部が来る。時間はない。
 
 柔軟、腹筋、発声。舞台に上がり、場面を選んで演じてみる。振り返って話し合ったらまた次。他のシーンも。ここ、もう1回。アクセント多すぎない?滑舌気をつけて。この時はどういう気持ちだと思う?

 役者のおかげで書いていたときよりも明らかに人物像が鮮明になっていく。思い描いていたものと違うこともあるが、より良くなっている気がする。

 ギラギラと照明に当たり続けて暑い。お腹から声を出して話し続けるし、流石に疲れた。

 「ちょっと休憩しよー」

 それぞれ、舞台に寝転んだり、客席の1番涼しいところに行ったり、お茶を飲んだり……

 私は舞台袖から外へ出て風に当たる。大きく深呼吸。せっかくの休憩時間だけれど、何度も考えてしまう。

 この子はどんな子なんだろうなー。何が好き?譲れないものは?癖は?姿勢は?

 どの役も演者に寄せて書いたし、この役は私の一部だけれど、不思議ちゃんのこの子は元気がないとどうもうまくいかない。

 練習期間はたったの1ヶ月。周りの高校みたいにコメディではないし、劇らしさもあまりないかもしれない。映像演劇みたいな自然な演技に脚本。

 でも、舞台上でそれができるってすごいことだから。だって、私、超高校級の役者よ?ものすごいプレッシャーは抱えているけれど、舞台は私のホーム。セリフなんて覚えたつもりはないけれど勝手に出てくる。ただその役を生きればいい。楽しめばいい。

 自販機でピッと600mL、70円の麦茶を買う。グビッと飲んで喉を潤せばリフレッシュ。さあ、後半戦といこうじゃないか。

 「最初から通そー!照明お願いしまーす!」
 

10/8/2023, 11:43:09 AM