コッ‥コッ‥コッ‥コッ…
静かな部屋に僕だけが小さく響く。
「もう少し、もう少しだけ。」
全身がピシピシ痛い。
あと少ししたら、きっと僕の役目は終わるんだと思う。
君が小さい時には、僕はもっと威勢よく大きな音で
色々な時間を伝えていたのに。
今じゃ情けないくらいに微かな音でしか、
時間を伝えられない。
『コレもかなり古いよねー。そろそろ買い替えたら?』
君のコドモが僕を見つめて音を出す。
『気に入ってるんだよ。そう簡単には手離せないなぁ。』
『ふーん。でも、音が小さいから父さん聞こえないでしょ?』
僕も気になってることを君のコドモはサラっと言う。
『不思議な事に、そいつの音はわかるんだよ。
…長い付き合いだからね。』
君はそう言うと僕を見つめる。
僕は君の優しい音が好きだった。
いつだって僕を包み込んでくれる温かい音。
君は目を瞑る。
少し微笑んでるように。
僕もあまり痛みを感じなくなってくる。
「あー…そろそろかもしれない。」
最期の時間を君と迎えられて嬉しいな。
そして、時を告げる。
コッ‥コッ‥コッ…コッ…
ポーン…ポーン…ポー…
9/6/2022, 2:00:26 PM