光が窓辺に触れるとき、
青いカーテンが息をする。
朝の吐息は、
金色の塵を巻き上げて、
部屋の隅々まで夢の残骸を運ぶ。
風が囁くたび、
生地は柔らかい波を描き、
その向こうにある世界の音を、
遠い海の歌のように届ける。
クラクションは潮騒に、
子供たちの笑い声は水面に弾ける光に変わる。
この一枚の布が、
私の世界と、
外の世界を分かつ。
けれどそれは壁ではない。
薄いヴェールだ。
指先でそっと触れれば、
織り込まれた糸の記憶が蘇る。
父の手のぬくもり、
母の優しい歌声。
それはただの布ではない。
家族の想いが織りなす、
古く、そして新しい物語。
夕暮れ、
光が燃え尽きるころ、
青は紫の深淵に沈み、
カーテンは夜の帳を降ろす。
そして、外の世界が眠りにつくとき、
カーテンは静かに、
私の心を守る。
明日、また光が訪れるまで、
柔らかな影の中で、
私は私自身になる。
このカーテンは、
私の呼吸、
私の鼓動。
そして、
私がまだ知らない、
世界の始まりの扉。
7/1/2025, 7:13:54 AM