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子供のままで

ある日 仕事場に行くと上司が若返っていた。

「おお~助手くん来たか~」だぼだぼの白衣の袖を揺らして僕の上司 自称発明家の
博士は、昨日までは、僕より年上の老齢の
大人だったのに 今日は僕より年下の
少年の姿に変わっていた。

「は...博士ですか....」と僕がおそるおそる
聞くと 博士は、「如何にも」と頷いた。

「どうしちゃったんですか?その姿」

僕が現実が信じられず疑問を呈すると
「若返りの薬を発明したのじゃ成功して
何よりじゃ」

口調は、間違いなく博士だった。

「わ..若返りな..何でそんな物を...」

「君が昨日呟いていたじゃろ
いつまでも子供のままで居たいと
それを聞いた瞬間 儂の中で天啓が
降りたのじゃこれじゃとな!!」

僕は昨日の自分を振り返る確かに
仕事に追われて膨大な資料の山を見つめて
そんな事を呟いた気がする....

「博士 僕は別に若返りたい訳では無く..」
唯 子供のままの心で大人になれたら
仕事も義務では無く趣味として心良く
受け入れられるのでは無いかそんな事を
思ってしまったのだ。

「いやいや助手くんこれは中々の
アイデアじゃ見てくれ体が軽いこの体なら
フィールドワークも出来るぞ!」

そう言うと博士は、いそいそと荷造りを
始めた。

「よ~しそうと決まれば出かけるぞ
助手くん!」

「えっ で 出かける?」僕は話の進み
具合に付いて行けなかった。

「テレビのニュースで言ってたんじゃ
Y山で幻の鉱石が見つかったとな真相を
確かめたくて ずっとY山に行きたかったん
じゃが...年齢を理由に諦めていたんじゃが
助手くんのおかげで決意出来た
感謝する。
と言う訳で助手くん一緒にY山に行こう」

そう言って博士は、僕にも荷物を背負わせ
決定事項の様に活き活きと外を指さし
フィールドワークに僕を連れ出し
Y山に出掛けたのだった。

そうしてこの時 僕は、思った。
嗚呼 子供のまま大人になった人が
僕の目の前に存在していたと....

そうして老いを克服した博士は発明の
技術と好奇心を携えて 西へ東へ
北へ南へ 東奔西走 行ったり来たり
フットワークが軽くなった博士を
止められる者は、いなかった。

僕は、博士の前でぼやいたり呟いたりするのは止めようと心に誓う

こうして 数日間 若返りの薬の効果が切れるまでフィールドワークに行きまくった
僕と博士は、後に全身筋肉痛に苦しめられる事になるのだった。

5/13/2024, 12:23:22 AM