祖母の家は、午後3時なのにとても薄暗かった。
なぜか周りには誰もいない。
3時ちょうどの重々しい振子時計の音だけが、室内に響き渡る。
幼い私は、恐怖心とも違う、切なさに似た感傷を感じながら、光が差し込む南側のカーペットの上でうとうとしていた。
大袈裟な時計の針の音ともに目が覚める。
ふと顔を上げると、手拭いを頭に巻き、青いもんぺを履いた祖母がタンスの前に立っていた。
私は強い瞼の重みを感じ、またそっと眼を閉じ眠る。
私は微睡みの中で、会った事の無い祖母を「祖母」だと認識していた。
時計の針の音と共に、幼い私が初めて感じた感傷だった。
2/6/2024, 5:53:55 PM