月城

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視察のため、暗い夜道を二人で歩いていると、光莉はどこか違和感を覚えた。

「……ここ、私たちが知ってる場所じゃないみたい」

横にいた妹の夜弥にそう伝えると、夜弥は冷静な口調でこう言った。

「……別世界に迷い込んだか」

「えっ。そんなことありえるの?」

さらっとあり得ないことを言う妹に、光莉は疑問を投げかける。

「0ではないだろう。これは私の憶測だが……、必ず何処かに出口はあるはずだ」

「……それならいいけど……」

「……不安なら手を繋ぐか?」

「!」

大丈夫だと遠慮する暇もなく、光莉は夜弥に手を握られてしまった。

……こうしていると、幼い頃を思い出す。

「……こんなに大きくなっても、夜弥はまだ私と手を繋ぎたいんだ」

「当たり前だ。逆に何がおかしい?私はこれからもお前と手を繋ぎたいと思っているし、他の行為だってしたいと思っている」

「な……っ、急な爆弾発言やめてよ……」

驚いて手を振り解こうとすると、逃さないと言わんばかりにまた手を掴まれる。

今度はさっきより強く、ぎゅっと。

この調子だと、どうやら当分は手を離してくれなさそうだ。


題『ここではないどこか』

6/27/2024, 12:00:23 PM