聞こえるのは、誰かの囁き。けれど目を開けても辺りは黒一色で、何一つ見えなかった。「誰か……」呟いても、返る言葉はない。ただひそひそと囁きが満ちている。手を伸ばす。触れるものはなく、冷たい宙を掻くだけだった。一歩、足を踏み出した。見えないことの不安はあるが、このままここに一人きりであるのは、もっと恐ろしいことのように感じていた。ゆっくりと歩き出す。どこに進んでいるのかは分からない。何も見えない暗闇の中、僅かな光を求めて彷徨った。
12/16/2025, 9:25:19 AM